「バイオメカニクスによる運動分析と肩凝りの話」

日本柔道整復接骨医学会 会長
バイオメカニクス(生体力学)研究所・信原病院院長
信原 克哉 先生
 関節の"しくみ"を調べる学問は、当初は生理学と言っていましたが、運動機能の解明がはじまると機能解剖学で扱うようになりました。その後、運動学が導入され、現在では生体力学(バイオメカニクス)の立場から追求するようになっています。しかし、残念なことにいまでもバイオメカニクス講座を持っている大学はほとんどなく、興味を持つ研究者の手で研究が行われている現状です。しかし、この分野は運動器の障害を取り扱う医師や柔道整復師にとって不可欠なものなのです。
 本日は投球障害を中心にして話を進めます。投球障害の主な訴えは痛みと不安定性ですが、これらは漠然としていてなかなか把握しにくいものです。また、さまざまな検査で障害部位が見つかったとしても、それが果たして原因なのか結果なのか判らないことがよくあります。投球動作は下肢・体幹・上肢などの協調、全身のダイナミックな運動で行われるものなので、足や膝の痛みや腰痛が肘や肩に障害をもたらしていることがあるのです。したがってスポーツの分野ではバイオメカニクスの手法を用いた病態分析が必要となっています。
 原因となった部位の修復だけでなく、その発生メカニズムを解明して再発防止に対応しなければ、病態や疾患を完治させることはできません。障害の発生メカニズムを解明して対応しておかないと、彼らを復帰させることはできないのです。「治療はうまくいったのだが、選手を現場にかえすことができなかった」では済まされません。後療法やリハビリテーションが個々の疾患あるいは患者によって異なることは当然ですが、その実践はあくまで機能解剖、運動分析、バイオメカニクスの知識に基づいたものでなければなりません。バイオメカニクスによる運動分析の実際と得られたポイントやコツにふれてみましょう。

 次に誰もが知っている肩凝りについてお話します。私は子供の頃から肩凝りに悩まされていました。大人になったら医学を学んで、肩凝りの原因を突き止めてやろうと思っていましたが、どの医学書にも"肩凝り"についてはまったく記載していませんでした。こんなに肩凝りで悩んでいる人が多いのに、西洋医学は何故まともにとりあげていないのかと不信感をおぼえたものです。
 "肩凝り"は病気ではなく、姿勢の悪さや疲労、睡眠不足、精神的ストレス、頚椎の異常などいろいろの症状が重なっている状態で、医学上は"症候群"と位置づけるべきものです。肩凝りを調べていて気づいたのは、楽しいことをしているときには肩が凝らないということです。たとえ凝っていても気になりません。これは、肩凝りが心のありようと深いかかわりがあることを意味します。肩が凝っているということは「無理していませんか」、「力をぬいてください」、「少し休んだほうがいいですよ」という体のサインなのかもしれません。
 では、肩凝りが医学的にはどのように捉えられているかをお話してみましょう。

信原克哉先生のご経歴

履歴書(平成20年4月1日)
氏名 信原 克哉(のぶはら かつや)
生年月日 昭和8年4月22日
学歴 昭和33年3月神戸医大卒
職 歴
■昭和34年4月
■昭和38年6月
■昭和40年4月
■昭和44年4月
■昭和53〜54年
■昭和62〜平3年
■平成5〜8年
神戸医大整形外科入局
米国留学
医学博士修得
神戸大整形外科講師
日本肩関節研究会会長
日本整形外科学会理事・兵庫県整形外科医会会長
アジア肩関節学会会長
現 職
■昭和45年4月
■昭和58年11月
■昭和58年12月
■昭和61年9月
■昭和61年11月
■平成1年2月
■平成2年3月
■平成7年4月
■平成8年10月
■平成10年10月
■平成12年4月
■平成16年10月
■平成18年4月
信原病院院長
米国肩・肘関節外科学会客員会員
比国整形外科学会名誉会員
北京医院整形外科名誉顧問
香港中文大学客員教授
柔道整復研修試験財団理事
上海第二医科大学客員教授
日本整形外科学会名誉会員
アジア肩関節学会基金理事長・中国第4陸軍医大客員教授
日本肩関節学会名誉会員
日本柔道整復師会顧問
日本柔道整復接骨医学会会長
明治国際医療大学教授
病 院 経 歴
■平成1年4月
■平成10〜16年
バイオメカニクス(生体力学)研究所開設
ジョンズホップキンス大・新潟大工学部との共同研究発足
受 賞 暦
・ニューオリンズ市名誉市民
・兵庫県国際功労表彰
・JCOA学術賞
・兵庫県医師会医学奨励賞
著 書
・肩−その機能と臨床(昭和54年初版、62年第2版、平成13年第3版)医学書院
・肩診療マニュアル(昭和62年初版、平成3年第2版、平成16年第3版)医歯薬出版
・肩こりの本(平成元年)神戸新聞総合 出版センター
・The Shoulder-Its function and clinical aspects-.2003,World Scientific Pub.
・明智光秀と旅(平成17年) ブックハウスHD
・がんこな肩こり(平成18年)株式会社 小学館
・相撲の始祖 野見宿禰の墓屋(平成20年) ブックハウスHD
論 文
・論文総数(英文を含む)370編
・肩に関する論文 270編